2024年1月23日に2023年の世界のトップ100GⅠレースが発表されましたので、3か年平均のレースレーティングランキングを更新しました。
改めてレースレーティングの概要について説明しますが、毎年1月にIFHA(国際競馬統括機関連盟)が、前年の「世界のトップ100GⅠレース」を公表しています。これは、世界のGⅠ(2歳限定を除く)のうち年間レースレーティングの上位100レースをランキングしたものです。
下記リンク先の「Racing」にある「Longines Rankings」に、2015年以降の「世界のトップ100GⅠ」や各馬のレーティングが掲載されています。
http://www.ifhaonline.org/
2016年分から、現在と同じ単年度の数値によるランキングになっていますが、2015年分までは直近3か年の平均値によるランキングでした。
年間レースレーティングは、4着までの馬のその年の最高レーティングの平均値です。レースのレベルの目安となり、格付け審査に用いられます。牝馬限定以外のレースで牝馬が4着までに入った場合には、4ポンドの牝馬アローワンスを加算します。
2021年から2023年の年間レースレーティングの3か年平均のトップ43は以下の通りです。
1位は凱旋門賞です。2022年と2023年は3位にとどまりましたが、2017年、2018年、2019年、2021年は1位で、少なくとも芝では世界一のレースと言っていいでしょう。賞金の低い欧州の中では1着賞金が約4.6億円と断トツです。
2位はブリーダーズカップクラシックです。2023年は20位タイと低調でしたが、2021年は2位、2022年は1位と、こちらはダートの世界一のレースと言っていいでしょう。1着賞金が約4.6億円と北米で最高賞金のレースです。
距離別に見ると、Lコラム(2101m~2700m)はトップ43のうち9レースしかありませんが、トップ10では6レースを占めています。凱旋門賞、「キングジョージ」、ドバイシーマクラシック、ジャパンカップ、有馬記念、宝塚記念、ブリーダーズカップターフ、日本ダービー、コロネーションカップがトップ43にランクインしています。日本のレースが4つ、英国が2つ、アメリカ、フランス、UAEがそれぞれ1つとなっており、このカテゴリーの日本のレースの充実ぶりがわかります。
Iコラム(1900m~2100m)がトップ43のうち17レースと最多で、高い順にブリーダーズカップクラシック、愛チャンピオンステークス、天皇賞(秋)、チャンピオンステークス、インターナショナルステークス、エクリプスステークス、仏ダービー、プリンスオブウェールズステークス、コックスプレート、ケンタッキーダービー、香港カップ、大阪杯、クイーンエリザベス2世カップ、ドバイワールドカップ、トラヴァーズステークス、皐月賞、香港ゴールドカップがランクインしています。英国のレースが4つ、アメリカ、日本、香港がそれぞれ3つ、オーストラリア、アイルランド、フランス、UAEがそれぞれ1つと広く各国で大レースが行われています。
Mコラム(1301m~1899m)はトップ43のうち14レースで、高い順にジャックルマロワ賞、ホイットニーステークス、メトロポリタンハンデキャップ、クイーンアンステークス、香港マイル、サセックスステークス、スチュワーズカップ、クイーンエリザベス2世ステークス、安田記念、ロッキンジステークス、マイルチャンピオンシップ、ムーランドロンシャン賞、チャンピオンズマイル、マカイビーディーヴァステークスがランクインしています。英国のレースが4つ、香港が3つ、アメリカ、フランス、日本がそれぞれ2つ、オーストラリアが1つとなっています。
Sコラム(1300m以下)はトップ43のうち3レースで、高い順にブラックキャビアライトニング、ヴィクトリアレーシングクラブステークス(ダーレーチャンピオンズスプリントまたはスプリントクラシック)、TJスミスステークスとオーストラリアの独壇場です。なお、芝の高額賞金レース世界一のジ・エベレストは、GⅠではないのでランクインしていませんが120.75で15位に相当し、オーストラリアで1位かつSコラムで1位に相当します。
Eコラム(2701m以上)は1つも入っていませんが、英国のゴールドカップとグッドウッドカップ、日本の天皇賞(春)、菊花賞が上位です。
国別に見ると、トップ43のうち、英国が10レース、日本が9レース、アメリカと香港がそれぞれ6レース、オーストラリアが5レース、フランスが4レース、UAEが2レース、アイルランドが1レースとなっています。
日本のレースはジャパンカップが5位にランクインしました。2023年には126.75で世界一になりましたが、この数値は直近10年でも2022年のブリーダーズカップクラシックと並んで世界最高値です。
ジャパンカップに続くのが、天皇賞(秋)、有馬記念、宝塚記念で少し間が空いて、日本ダービー、安田記念、大阪杯、マイルチャンピオンシップ、皐月賞です。大阪杯は、近年ドバイや香港などの海外に向かう馬が多くなったため低くなっています。マイルは、長距離や中距離と比べると日本馬のレベルが高くないことから、レーティングが低めです。
3歳限定戦は仏ダービー、ケンタッキーダービー、日本ダービー、トラヴァーズステークス、皐月賞がランクインしています。仏ダービーは4年前まではそこまで高くありませんでしたが、直近3年は非常に高くなっています。
ダートはアメリカの5レースとドバイワールドカップしか入っていません。これはいくつか原因がありますが、アメリカの馬のレーティングが低めであることが最大の要因だと思います。
牝馬限定戦はランクインしていませんが、トップはブリーダーズカップフィリー&メアターフで僅差でこれに続くのがブリーダーズカップディスタフです。欧州の強い牝馬は牡馬混合戦にも出走しますし、牝馬限定GⅠがたくさんあるので、出走馬が分散してレースレーティングがそれほど高くなりませんが、アメリカのダート牝馬は、かなり強くてもブリーダーズカップクラシックに向かうのは稀で、ほとんどがディスタフを目標にするので、レベルが高くなります。フィリー&メアターフもアメリカの芝中長距離の牝馬のほとんどが目標にするレースであり、かつ欧州馬や日本馬が出てくるので、高いレーティングを獲得しています。
最後に2023年単年度のトピックもいくつか載せておきます。
・ジャパンカップが2014年以来となる1位で、単年度のレースレーティングで表彰されるようになった2016年以降、日本のレースとして初の1位(これまでの最高は2020年のジャパンカップの3位)
・8位までに日本のレースが4つ
・世界のトップ100GⅠに入った日本のレースは15レースで、2020年の14レースを上回って過去最高
・フェブラリーステークスは初のトップ100入り。日本のダートGⅠが3つともトップ100入りしたのも初めて
・東京大賞典は2017年以来のトップ100入り
・ヴィクトリアマイルが日本の牝馬限定レースとしては2020年の同レース以来2度目となるトップ100入り
・日本のクラシックはダービーと菊花賞の55位が最高。2018年以来の低い順位
・スプリントGⅠは3年連続でどちらもトップ100に入れず