毎年1月にIFHA(国際競馬統括機関連盟)が、前年の「世界のトップ100GⅠレース」を公表しています。これは、世界のGⅠ(2歳限定を除く)のうち年間レースレーティングの上位100レースをランキングしたものです。
下記リンク先の「Racing」にある「Longines Rankings」に、2015年以降の「世界のトップ100GⅠ」や各馬のレーティングが掲載されています。
http://www.ifhaonline.org/
2016年分から、現在と同じ単年度の数値によるランキングになっていますが、2015年分までは直近3ヶ年の平均値によるランキングでした。
この公表数値を元に、2019年から2021年までの3ヶ年の年間レースレーティングの平均値のランキングを作成しました。
年間レースレーティングは、4着までの馬のその年の最高レーティングの平均値です。レースのレベルの目安となり、格付け審査に用いられます。牝馬限定以外のレースで牝馬が4着までに入った場合には、4ポンドの牝馬アローワンスを加算します。
25位タイまで掲載しています。これより下位になると100位未満の年があるレースがあって、公表資料のみからは順位がわかりません。
1位はやはり凱旋門賞です。直近9年間で6年(2013年、2015年、2017年、2018年、2019年、2021年)も1位になっています。伝統や格式はもちろん、賞金の低い欧州の中では1着賞金が約3億7千万円と断トツで高く、2400m路線の欧州馬全て(騸馬を除く)が目標とするレースになっていますので、高いレーティングを持つ馬が多く出走することで、レースレーティングが高くなっています。
距離別に見ると、Lコラム(2101m~2700m)が6レースで、高い順に凱旋門賞、「キングジョージ」、有馬記念、ジャパンカップ、宝塚記念、ブリーダーズカップターフがランクインしています。
Iコラム(1900m~2100m)が最多の12レースで、高い順にエクリプスステークス、ブリーダーズカップクラシック、天皇賞(秋)、愛チャンピオンステークス、インターナショナルステークス、チャンピオンステークス、プリンスオブウェールズステークス、クイーンエリザベスステークス、ケンタッキーダービー、コックスプレート、大阪杯、香港カップがランクインしています。
Mコラム(1301m~1899m)は7レースで、高い順に安田記念、ホイットニーステークス、ジャックルマロワ賞、香港マイル、クイーンエリザベスⅡ世ステークス、サセックスステークス、チッピングノートンステークスがランクインしており、安田記念が最も高くなっています。
Sコラム(1300m以下)はTJスミスステークスのみです。Eコラム(2701m以上)は1つもありませんが、最も高いのは天皇賞(春)と英ゴールドカップだと思われます。2020年の英ゴールドカップが100位未満のためレースレーティングがわかりませんが、恐らく114.25くらいだと推定されるため、天皇賞(春)とほぼ同じです。
国別に見ると、26レース中、イギリスが7レース、日本が6レース、アメリカとオーストラリアが4レース、フランスと香港が2レース、アイルランドが1レースとなっています。
日本のレースは高い順に天皇賞(秋)、有馬記念、ジャパンカップ、安田記念、宝塚記念、大阪杯がランクインしており、明確に秋>春となっています。これは、3歳馬の出走の有無、春はドバイや香港に遠征する馬が多い、宝塚記念は時期的に回避する馬が一定数いる、天皇賞(春)は距離が長い、といったことが要因と考えられますが、逆にマイル路線は、レーティングの高い中距離馬の一部が出走する安田記念の方が高くなっています。
ジャパンカップは2014年にレースレーティング世界一となるなど、日本で最もレベルの高いレースの1つですが、2019年はメンバーがそろわなかったため、天皇賞(秋)と有馬記念を下回っています。
3歳限定戦は唯一ケンタッキーダービーのみがランクインしています。ランク外ですが、これに続くのが日本ダービー、英ダービー、皐月賞、アメリカのプリークネスステークス、英2000ギニーです。
牝馬限定戦はランクインしていません。3年とも100位以内に入っているレースがないため推定になりますが、牝馬限定戦の中ではブリーダーズカップディスタフとブリーダーズカップフィリー&メアターフがトップと思われます。特にディスタフは毎年コンスタントに高レーティングをマークしており、世界最高の牝馬限定戦と言えます。これらに続くのが、フランスのオペラ賞と英国のヨークシャーオークスです。欧州の芝路線はもちろんアメリカの芝路線よりレベルが高いですが、欧州の強い牝馬は牡馬混合戦にも出走しますし、他にいくつも牝馬限定GⅠがあるので、オペラ賞やヨークシャーオークスはこの路線の全ての牝馬が目標とするレースというわけではありません。それに対して、アメリカのダート牝馬は、かなり強くてもブリーダーズカップクラシックに向かうのは稀で、みんながディスタフを目標にするので、レベルが高くなります。フィリー&メアターフもアメリカの芝中長距離の牝馬みんなが目標にするレースであり、かつ欧州馬が出てくる(2021年はラヴズオンリーユーも)ので、高いレーティングを獲得しています。
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年のドバイワールドカップデーが中止となったため、毎年レースレーティングの高いドバイシーマクラシックがランクインしていません。2020年を除けば常に15位前後に入ってくるハイレベルなレースです。